『素描20』
夜はまだ明けず、subculture Sage とキーボードを打つ音が部屋に響く。
干からびて地面に落ちている柿のように、多くの人とは無関係の時間が流れる。
丸い形をした電球から発される光が部屋を煌々と照らす。
朝に用事はなく、チップスターの箱の高さほどのスピーカーの網目の丸を数える。
「無意味なことはどうして虚しいのだろう」
128あたりまで数えた時にそれは口から出た。
無意味なことを後悔しないためには、ある種の決意が必要であると気が付いた。
毎朝、無意味を愛でる訓練を始めた。5時半に起きては部屋の中で無意味と繋がれる場所を探した。
窓の外ではカラスがゴミを荒らし、無数の白い紙のようなものが散らばっている。
横にはふっくらとした頬に、つまむと消えてしまいそうな薄い唇の女性がいる。
ダウンジャケットを着込み荷造り紐をほどき続けた。
その頭の中では同じセリフが繰り返されていた。
「朝はいつまでも意味を所有している」